魂のゴンゲ
小澤が金物にこだわっていることは、
ステージをよく観てくださっている方は、ご存知だと思うのですが、
私から観ても、
なんだか同じようなカウベルに、いろいろとガムテープを巻いては、やり直して、音を調律しているような感じに見えました。
こんなにカウベルがたくさんあっても、同じ音程のものはないので、
それぞれに活躍する状況が違うのでしょう。
この中には、私のリトミック用に買ったものもあるのですが、
小澤と一緒に使っていたので、今は、まとめておいています。
ひとつひとつを叩き比べてみると、すべてがまろやかに小澤の音になっています。
「嫌な金属音」とよく言っていたので、嫌でない音にするまで、ガムテープを巻いていったのでしょう。
リボンクラッシャー類も、それぞれ欲しい時に対応できるように持っていたようです。
私が小澤と活動していた「紙芝居」に音をつける作業では、
台本を渡されると、ずっとこもって音づくりをしていました。
劇団四季でライオンキングの劇伴の仕事を開幕の2年目から亡くなるまでの13年間勤めていたので(亡くなる直前までパーカッションIIレギュラ-)、物語の状況に自分で選んだ音を載せる作業は、本当に嬉しそうに取り組んでいました。
そんな小澤が持っていたとっておきの金物がありました。
大きな大きなゴンゲです。
二連になっているのは、大変、珍しい形だそうです。
そして、重いです。
でも、音は、澄み渡るように響きます。ちょっと、お寺の鐘のようなニュアンスも含んでおり、
いろんな音と混じっていても、すぐに聴き分けられる特性を持ち合わせています。
そのゴンゲが、今回、オフィスジングルジムから単独出張に行きました。
J-WAVE<NIPPON EXPRESS SAÚDE! SAUDADE…>CARNAVAL 2015
ブラジルの三つの地方のカーニバルを東京に集結させるというイベントで、
レシーフェ地方、「マラカトゥ・ナサォン」の『BAQUEBA(バッキバ)』で、
本当に美しい音色で、際立って鳴らしていただいてきました。
そして、演奏の最後に、天空にむけてゴンゲを突き上げてポーズをとられると、
照明があたって、キラキラと輝いていました。
小澤が遺す楽器と処分する楽器を決める時に、
いろんな指示を出していたのですが、
「俺が死んだ後は、楽器が働くから」
と言った意味の中に、こうした人とのつながりをもたらしてくれるという意味もあったのかなぁ、と思っています。
そして、
小澤に再会できる気持ちで、ステージを客席で待ってみて、
演奏される音に耳を傾けてみて、
楽器を大切に扱っていこうという気持ち同士がつながったと感じました。
キラキラとライトを浴びるゴンゲに向かって、
「働いたね。」
と、声を心でかけました。
楽器が戻ってくるときには、
お疲れさまとともに、
「ゴンゲ君、旅をする」の武勇談の数々をお聞きできるのを楽しみに待っていようと思っています。
世田谷のbaquebaの皆さん。
素敵な演奏とエナジーをありがとうございました。